愚痴ばかりの同僚に、気づかされたことがあります
私はこの半年ほど、「愚痴には参加しない」「できる限りマイナスの言葉を使わない」ことを意識してきましたが、そうしようと決めるに至った経緯を書いておこうと思います。
今の会社で働き始めた当初、最も堪えたのは、超アナログな事務処理でもなく、高圧的な営業の横暴な態度でもなく、以前よりずっと下がってしまった給料でもありません。
一番キツかったのは、同じ事務の女性の口から際限なく垂れ流される「愚痴」でした。
「こんな、吹けば飛ぶような小さい会社・・・」
「この会社に、仕事ができる人はいない」
「こんな給料じゃ生活していけないわ。あーあ、前の会社、辞めなきゃよかった」
「こんなところで頑張ったって何にもならないわよ」
…等々。
入社当初、私に仕事を教えてくれたのは主にその女性だったこともあって、私は彼女からの影響を最も強く受けていました。
毎日毎日、身近な人の愚痴の嵐にさらされていると、その影響を避けることはなかなかできません。
つまらない仕事、要注意人物だらけの社内、安い給料、まじめにやるだけ損・・・
1年以上、その女性に言われたことをそのまんま信じていました。精神的に弱っていた時期での入社ということもあり、自分の頭で冷静に状況を判断できなくなっていたことも問題でした。
でも自分の心が復活してくるにつれ、徐々にこの女性の言動に違和感を感じるようになりました。
「悪い人」でないことは分かっている。でも、間違いなく私に「悪い影響」を与える人でした。
断定的な口調で繰り返される「負の言葉」は信念となる
彼女も私と同様、今の会社へ転職することで「キャリアダウンした」と感じている人間だったようです。
以前は大手企業の営業だった、といいます。それが今では「誰も名前を知らないような小さな会社」の営業事務に成り下がり、「無能な営業から雑用を押し付けられている」、「あのまま大手を辞めなければ、今頃年収は1,000万を越えていたかもしれないのに…」と嘆いています。
当時の肩書きや仕事に、そこそこの自信があったのでしょう。余計に今の会社、仕事、収入への不満が膨れているようです。もう、自分の中だけには留めておけないほどに。
上司が社内に居なくなると途端に、仕事内容や給料についての愚痴が始まるのです。
最初の頃は、私は「本当に酷い会社なんだな」「この人は、能力以下の仕事に就いてしまって辛いんだろな…」と何の疑いも持たずに彼女の愚痴を聞いていました。
同時に、彼女と同様にそんな「ひどい会社」に入ってしまった自分の将来をも悲観していました。
…―でも、いつの頃からでしょうか。「このままで終われない」と、自分の中で決めた時からかもしれません。
終わりのない愚痴を聞きながら、彼女の「ひどい現状」を作り出しているのは、彼女自身だと確信するようになりました。もっと言えば、彼女が発する言葉ひとつひとつがその原因になっているのだと。
彼女は常に、断定的なものの言い方をする人です。
「こんな異常な会社はない」
「あの人はとても、他ではやっていけない」
「こんな安月給じゃどうにもならない」
と、こんな調子で環境や周囲を否定します。
彼女の話し方で特徴的なのが、自分の考えをさも唯一無二の真実であるかのように話す、という点でした。否定的な物事について話す時には、何故か自信たっぷりなのです。
また、その状況はもう一生変えることはできないかのように話すのです。彼女のあきらめきった顔を見ていると、「囚人」という言葉が思い浮かびます。
でも私の目から見ると、特別ひどい出来事が彼女の身に降りかかっているわけではありません。
現実には大したことも起こっていないのに、彼女の記憶の中にあるイヤな思い出とそれに伴う感情を、何度も何度も再生して、毎日毎日苦しい気持ちを思い起こしている様子です。
(入社当初は毎日、全員から怒られていた・・・と言っていましたから。)
自分の愚痴によって、自分の首を絞めているだけなのに、そのことに気づいていない… そんな気がします。
語尾が断定的な上に声が大きいので、余計に良くないのでしょうね。
自分でも、自分が言ったことは事実だと思いこんでしまっている様子です。
確かにおかしなこと、理不尽なことは多い会社だとは思うけれど、いわゆる「ブラック企業」では決してないし、給料も、仕事内容に対して決して安くはないと私は思います。
また、彼女は上司からも信頼されているし、難しい仕事も任されています。頭の回転も早く、機転も利く人だと、皆分かっているからです。
本人は、「上は皆、”使えるものは使う”ってだけよ」と否定していますが・・・あれだけ頼られていて、逆になぜそんな風に自分を卑下して考えられるのか不思議なくらいです。
(私の脳内がおめでたいだけなのでしょうか。)
現実がどうでも関係ない。自分が信じたことが人格に、人生に影響を与える
そして、もしそんなに今の会社がイヤなのであれば、能力的には転職だってできる人だと思います。
彼女は「この歳じゃ雇ってくれるところなんてない」と決めつけていますが…
でも転職なんて運次第なところもあるし、元営業だけあって印象はとてもいいので、面接では有利な気がするんですけどね。
「昔と比べてかなり太った」そうで、確かに痩せてはいませんが、それでも充分綺麗な人です。目鼻立ちが整っていて、笑うととても華があります。
でも、自分では「私はもう歳だから」「更年期だわね」などと言っています。
万事がこの調子。
彼女は自分自身(と、自分を取り巻く環境)を、あまりにも悪い方へ歪めて認識してしまっていると思います。
でも毎日毎日、自分自身について否定的な言動を繰り返していたら、それがその人にとっての「現実」になりますよね。
今日まで何年間、そうして過ごしてきたのかは知りませんが、今ではすっかり日々口にしてきたことが「信念」として定着してしまっているようです。
おそらく彼女は転職もしないでしょうし、毎日同じ愚痴を垂れ流しながら、定年まで(それまで会社が存続していればの話ですが)ここに勤めるのでしょう。それしか道はないと、自分で決めてしまっているからです。
端から見た現実がどうであろうが、結局は自分が信じたことが一番、自分の人格や人生に影響するのだ、ということを、彼女は非常にわかりやすい、悪い例となって私に教えてくれたのでした。
以来、私は口にする言葉には細心の注意を払うようになりました。
何でもかんでもプラス思考!というのは苦手ですし、無理があるのでやりませんが…
嫌なことがあった時、気持ちが塞ぎがちな時は、「沈黙」するようになりました。
どんなことでも、口にすることで自分にとってより確かな現実となってしまうようです。だとすれば、安易に現状を嘆いたり、将来を悲観したりするべきじゃない。
そう考えるようになったのです。
先輩の愚痴から距離を置く、そして自分もマイナスの言葉は使わない。それらを意識するようになってから、悪い流れが止まったようにも感じています。
職場ではだいぶ“おとなしい人”になってしまったかもしれませんが、今の会社ではそれでいいかな…。