職場で迷惑がられていた先輩ワーママ達
私が前々職の会社で育休から復職したのは、今から約3年前のことでした。
その時点で同じ部署には既に2人、時短制度を利用して働く「先輩ワーキングマザー」がいました。30名程度の部署なのに、私が復職すれば時短社員が3人も。これは、かなり異例の事態だったと思います。
「先人がいるから大丈夫。安心して戻ってきてね!」
復職直前、同僚にそう言われてホッと胸をなで下ろしたのも束の間。いざ復職してみると、「先人」は2人揃って上司や同僚たちからあまり快く思われていませんでした。それどころか、迷惑な存在として疎まれていることが判明したのです。
ワーキングマザー3人目として同じ部署に復職した私は、その様子を目の当たりにして「自分は受け入れてもらえるのだろうか」という強烈な不安を覚えました。
ワーママ達の何が「迷惑」だったのか
一体なぜ、先輩ワーママ達はそんなにも職場で嫌われてしまったのでしょうか。私が見る限り、確かに会社や部署の受け入れ態勢が整っていなかったことも一つの要因ではありますが、ワーママ自身の仕事に対する姿勢や態度にも、かなり問題があるように思われました。
例えば…
簡単な仕事ばかり選ぼうとする
先輩ワーママ2人に共通していたのが、仕事の中でも簡単なもの、単純なもの、負担の少ないものばかりを選んでやろうとしていたことでした。
私も1歳児を保育園に預けて復職した者として、そうしたくなる気持ちは分かります。いつ子どもが熱を出して、保育園からお迎え要請の電話がかかってくるか分からない。そうなったら、明日も明後日も、会社に来られるか分からない。となると、複雑な業務や負担の大きい仕事を引き受けることは、結果的に同僚に迷惑を掛けてしまうことになるかもしれない…
だったら最初から、確実にできる範囲の仕事だけをしよう。
ある意味職場や同僚たちへの配慮とも言えなくもないのですが、当時そこは鬼のように忙しい部署でした。そんなところで、単純作業やルーティンワークしか引き受けない社員が2人もいるのでは困ってしまいます。他のメンバーへの負担が、一気に増してしまうからです。その負担を担う周囲の人々が、不満を抱かないはずがありません。
(仕事を選り好みするなんて通常できることではないのですが、当時その会社には育休から復職して働く女性がまだまだ少なく実績がなかったことから、上司が彼女たちの扱いにおっかなびっくりだったせいもあると思います。)
また先輩ワーママは2人とも社歴が長く、社内の等級も比較的高い人たちでした。そんな彼女たちが簡単な仕事ばかり選ぶということは、役職・給料と仕事内容が全く釣り合っていないという状況を生み出し、さらに周囲の社員の怒りを増長させる結果になりました。
子どもを理由に堂々と仕事を断る
簡単な仕事でもやるだけまだマシで、2人のワーママは高確率で上司から割り振られる仕事を断っていました。育児を理由に、です。
私より半年先に復職していたAさんは特にその傾向が顕著で、仕事を増やさないよう常に細心の注意を払っていました。
これとこれを、Aさんにやってもらえると有難いんだけど…
ミーティングで上司が遠慮がち(気の弱い上司でした)に仕事を振ろうとすると、途端にAさんの顔が曇ります。
まだ、○○も終わっていませんので…
それをやると、△△ができません。どちらが優先ですか?
万事そんな調子で、決して新たな仕事を受けようとしないのです。彼女の一貫したこの態度は、「ワーキングマザー」「働くお母さん」への評価を相当悪くしていました。
子どもがまた熱でも出したら、逆に迷惑かけちゃうから…
確かにAさんの息子さんは病気がちで、Aさんは当時かなり頻繁に欠勤せざるを得ない状況でした。風邪だけでなく、ノロウイルスやインフルエンザなど保育園で流行する感染症には必ずと言っていいほどかかり、その度にAさんは数日の休みをとらなければなりませんでした。そしてそんな状況下でも、育児に関しては旦那さんからは一切、協力を得られないとのこと…
今度いつ、保育園から呼び出しがかかるか分からない。その度に、次は何日休むことになるか分からない。そんな状態だったので、Aさんは自分が「これなら確実にこなせる」と思える範囲を超えた仕事については、堂々と断っていました。
元々責任感の強い人だったので、「引き受けたにもかかわらずできなかった」という事態は避けたかったのだと思います。また彼女は不確定なことを嫌う性格で、どうなるか分からない子どもの体調が仕事に及ぼす影響を極力排除したかったのでしょう。私も、彼女が「ラクをしたくて」仕事を断っていたとは思っていません。
ただ、Aさんの基準は「いつでも子どものために早退・欠勤できること」でした。でも一週間何事も起こらなければ(お子さんが一週間元気に保育園に行ってくれれば)、彼女の業務量にかなりの余裕があることは誰の目にも明らかです。にもかかわらず、周囲がどれだけ忙しく、どれだけ大変な状態であっても、Aさんは決して自分の仕事を増やそうとしない――… そのために周囲からは反感を買い、上司からは戦力外と見なされてしまったのです。
子どもの都合で早退・欠勤するのは仕方がないことだと、みんな理解はしていました。ただ、「その分、やれる時はもうちょっと頑張ってくれてもいいんじゃないの?」というのが、周囲の正直な気持ちだったと思います。
過剰な「忙しいアピール」をする
負担の大きい仕事が回ってこないようにするためか、また仕事を断る時のための「伏線」だったのか不明ですが、2人の先輩ワーママは常に「忙しいアピール」をしていました。
もう一人の先輩ワーママ・Bさんは特に、出勤から退勤まで四六時中バタバタと忙しそうにしている人でした。朝はダッシュでオフィスに駆け込んできて、日中はせわしなく独り言を言いながらキーボードを叩き、退勤時も「キャー!お迎えの時間が~!」と叫びながら、大慌てで帰っていくのです。
昼休みもランチには出ず、デスクでサンドイッチを頬張りながらPCに向かっていましたが、その態度は周囲から「単なる忙しいアピール」だと言われていました。
というのも、Bさんが受け持っていたのは単純作業ばかりで、同僚たちは皆そのことを知っていたからです。そのため、
あの人は難しい仕事を振られないようにするために、忙しそうにしてるだけ
陰で、そんなふうに言われてしまう始末。
確かに、Bさんの業務量と業務内容を考えれたら、「負担の大きい仕事を振られないためのパフォーマンス」と受け取られても仕方がないような状況でした。
子どもの話が多すぎる
2人が簡単な仕事しか受けないのも、振られた仕事を断るのも、その主な理由は「育児」です。
すごく乱暴な言い方になりますが、彼女達は自分が育児をする時間と余力を確保するために、同僚たちに負担を強いていました。当然、同僚たちは(間接的にではあっても)自分たちに負担を強いている「子ども」の話など、聞かされたところで面白くも何ともありません。
ところが当のワーママ達は、周囲が「子どもの話など聞きたくない」ということに、どういうわけか気づかないのです。先に挙げたAさんは、特にそうでした。毎日毎日、息子さんの話ばかり。
この間、ケンタがこんなこと言ってたんだよね。笑っちゃうよね!
ケンタが昨日、保育園で噛まれたの。どうも女の子にやられたみたいなんだけど…
その「ケンタ」のお蔭で私たちの仕事が増えてるんだけどね… と言わんばかりの苦笑いで、どうにか相槌をうっている人もいました。仕事を受けない、断るばかりでなく、当の仕事をセーブする理由である「子ども」の話が多すぎることに、不快感を抱いている同僚は少なくありませんでした。
迷惑なワーママにならないためには?
「先に復職したワーママ達が迷惑がられている」という状況は、同じ部署に復職したばかりの私にとっては恐怖でした。彼女たちの二の舞になることを恐れた結果、かなり無理して働くことになってしまったのですが… その話は別記事に譲るとして。
会社の思惑、上司たちの意識、周囲の感情、そしてワーキングマザー自身の姿勢…。それらが全く噛み合わず、その結果非常にいびつな状態を作り出していました。それぞれに改善すべき点はあったと思います。
しかし私が復職した当時の職場に限っていえば、ワーママたちがちょっとワガママ過ぎたのではないかと思うのです。
確かに、子どもがいなかった頃とは働き方を変えざるを得ない部分は出てきます。特に大きく影響するのが、保育園の時間や子どもの体調不良による早退・欠勤といった、時間的な制限です。ただ、こればっかりはどうしようもありません。保育時間は決まっているし、子どもはいくら気をつけていても、病気をするときはします。出産前より、ほぼ確実に働ける時間は減ってしまうでしょう。
であれば、労働時間とは別のところで勝負してみたらよいのではないのでしょうか?
以前と同じ時間働けないからといって、以前と同じ業務量をこなせないとは限りません。もちろん同じやり方をしていたら絶対に無理ですから、徹底的に効率化する方法を考えてみる。保育園のお迎えの時間が決まっている、下手すると明日は会社に来られないかもしれない… そんな常にギリギリ状態のワーママだからこそ、発見できる無駄、改善できるポイントがあるはずです。上手く効率化していければ、その分時間短縮につながり、空いた時間でさらに別の仕事を受けることもできますよね。
長く働けない分、効率化によって仕事量を増やしていく。そんなふうにして「攻め」の姿勢で仕事をしていれば、迷惑どころか重宝されるワーママにだってなれるはず。
私は、そう思っています。